江戸には「四ツ目屋」をはじめとするアダルトショップがいくつもあり、男女向けに性具やオナニーグッズを販売していました。残念ながらそれらのカタログはなかったようですが、いくつかの艶本から、その豊かな世界をうかがい知ることができます。
江戸時代のラブグッズ

江戸時代、オナニーは独楽(どくらく)と呼ばれていました。まずは男性の独楽用品から。 『閨中紀聞 枕文庫』(けいちゅうきぶん まくらぶんこ)には、「吾妻形」の絵図と説明があります。
「ここは鼈甲(べっこう)の薄きものを以て張り合わせ、まらを両方より締めるが如くに作る。びろうどにて張り、包み作る」
これは外側を鼈甲、内側をビロードで作ったオナホールということです。同書には、コンニャクでの作り方も書かれています。
女性用の独楽具と言えば、ディルド=張形。『阿奈遠加志』(あなをかし)には、張形の起源が「奈良時代に、中国から朝鮮半島を通って、水牛の角で作った張形が日本へ伝わり、宮廷の女官たちの間で流行した」と書かれています。
パートナーと一緒に使える江戸時代のラブグッズ
カップルで使用する前提の、男性器に装着して使用する性具もいろいろあります。『艶道日夜女宝記』(びどうにちやじょほうき)にはこのようなものが紹介されています。
- ひごずいき
男性器に巻き付けて、刺激を与えると共に、痒みを感じさせる成分を女性器にすり込む - 兜形
亀頭を覆う形をした、皮や鼈甲の細工で、女性に刺激を与え、男性を鈍感にし、避妊にも用いられる - 鎧形
男性器の亀頭以外の部分を覆う形をした、皮や鼈甲の細工で、勃起を支え、女性に刺激を与える
これらの多くは、シリコンなどに素材を替え、現代でも名前を変えて使われていますね。
江戸時代の男女を支えた「長命丸」

最後に、秘薬の代表とも言える、「長命丸」(ちょうめいがん)。最初は単なる強壮剤だったといわれています。しかし時代が下ると、男性器に塗れば射精せずに何度でも女性を絶頂させ、さらに好きなタイミングで射精も可能という魔法の薬まで囁かれるようになってしまいました。艶本『枕文庫』(まくらぶんこ)には、何種類かの秘薬について、製法も書かれています。
こうしてみると、電動以外のラブグッズは、すでに江戸時代に出そろっていたようです。
現代のラブグッズの元になっとたもいえるラブグッズの数々は、男女のラブタイムをよりよい時間にしてきたことでしょう。
まだ使ったことが無い場合には、手の届きやすいアイテムから、使ってみてはいかがでしょうか。一度使うと、江戸時代から今日まで続く理由も体感することができるかもしれません。皆様のラブタイムがより充実することを願います。
1970年生まれ。1996年より、漫画原作者として活動。2009年、日刊誌連載「日本性史」にて、アダルトライターとして活動開始。
スマートフォンアプリ「セックスの日本史」、女性向けWEBサイト連載「蔦葛物語」「オンナとオトコの日本史/世界史」などの著作がある。