江戸時代にピストン運動の指南書があった!?
現代でも一般的なピストン運動のテクニックとして、「九浅一深」(くせんいっしん)というテクニックが知られています。実は、江戸時代にはすでに、このピストン運動のマニュアルが書かれていました。
まず江戸時代のピストン運動に関する知識ですが、戦国武将たちに読まれていたという艶本『黄素妙論』(こうそみょうろん)によると、「深く入れるだけではダメだし、大きいのがいいと言うわけでもない。その時女性が突いて欲しいと望むところを突くのが快感につながる」と書かれています。
まさに真理ですが、これでは男性は少々困るでしょう。「突いて欲しい箇所」を適切な指示ができる女性は、それほど多くありませんからね。
そんな人にオススメしたいのが『房内戯草』(ぼうないたわむれぐさ)。この艶本は『黄素妙論』よりも後の1663年頃に書かれており、「九浅一深」を最初に提示した本と考えられます。
ピストン運動の具体的な方法とは
『房内戯草』には、ピストン運動の前から、以下のように書かれています。
「最初は、男性器を少し挿入して、すぐに抜くようにする。そうすると女性は欲しがって乱れるが、わざと指でいじって、焦らしてやってから、挿入して、二度~三度動かす。女性が腰を押しつけてきたら、三センチほど入れて、上下をむらなく擦り回すと、寒い夜に氷水を浴びせられたかのように、女性は快感に身をおののかせる」
数値を用いて、とても詳しく説明されていますね。これなら『黄素妙論』のように困ることはなさそうです。
そしていよいよ「九浅一深」。
「それから深く挿入し、擦り回す。その時、九回は浅く、一回は深く突くとよい。このテクニックがあれば、男性器の大小は問題にならない。百回に九十九回、女性をイかせることができる」
男性器の大きさに関係なく99%の確立でイかせられる…とのこと!現代にも通じるこのテクニックは、どうやら著者も自信満々のようですね。
高テクニックは時代を超えて継承される?
江戸時代のピストンテクニックはこれだけでは終わりません。
その後少し年代が下って1695年頃に書かれた艶本『好色旅枕』(こうしょくたびまくら)では、「九浅三深」というテクニックを提唱しています。そこではこのようにあります。
「十分に前戯を行い、女性が挿入を求めてきたら、浅く九回抜き差しする。女性は『寒い夜に氷水を浴びせられたかのように』快感におののく」
ここまでは『房内戯草』の「九浅一深」と同じ。テクニックは伝承されているのですね。しかし『好色旅枕』では、ここからこう続きます。
「女性が『もっと深く』と腰を押しつけてきたら、そこではじめて根元まで深く、三回抜き差しする」
これを繰り返せば、女性は必ず絶頂に達すると記されています。
このように、江戸時代の男性たちは、女性を喜ばせるためのテクニックを磨くことに余念がなかったようです。女性としては、男性がより女性を喜ばせようと勤勉でいてくれることは、正しい知識であればとても嬉しいことですよね。
普段は口に出しにくい性に関する話題でも、古典に関する雑学なら少しは恥ずかしさもまぎれるもの。そんな時、今回の艶本の話題を提供したり、試してみたいと切り出す事で、彼の「エッチテク」への好奇心の扉を開くことが出来るかもしれませんよ。
1970年生まれ。1996年より、漫画原作者として活動。2009年、日刊誌連載「日本性史」にて、アダルトライターとして活動開始。
スマートフォンアプリ「セックスの日本史」、女性向けWEBサイト連載「蔦葛物語」「オンナとオトコの日本史/世界史」などの著作がある。