江戸時代、『初めて同士』のカップルはどうしていた?

江戸時代の女性は性に関して進んでいましたが、それでも武家や、大きな商家の娘は、処女のまま結婚することが珍しくありませんでした。
嫁入り道具の中に春画を忍ばせる習慣はありましたが、春画では、処女の扱いまではわかりません。
新郎が経験豊富ならよい(別の意味で悪いかもしれませんが)のですが、新郎も童貞だったりしたら、二人の初夜には、かなりの困難が予想されます。
しかしご安心を。江戸時代には、そういうカップルのための指南書があったのです。その名も「婚礼秘事袋」。内容を簡単に見てみましょう。
全部で5Step! 「婚礼秘事袋」が伝える初エッチの心得

当時、処女といたすことを、「新鉢(しんばち)を割る」と呼びました。「婚礼秘事袋」では、「新鉢を割る」のには、少なくとも五日間をかけるよう勧めています。
「初めて陰茎を通し押し分けるなれば、此のとき、少し痛む物なり」
一般の風俗に詳しくない、童貞の武家などは、そもそも、「処女が痛がる」ことすら知らなかったでしょう。一見当たり前のことでも、注意が必要だったのです。
二日目は、
「普通に挿入して構わないが、まだ痛がるはずなので、無理をせず、休み休みおこなうように」
引き続き、新婦に対する心遣いが大切です。
三日目は、
「多少激しく出し入れしても構わないので、男性器の味を覚えさせるようにしなさい」
あまりおずおずとしてばかりいると、かえって「中イキ」への道が遠くなる。そろそろ、少し無理をしても構わないと伝えています。
四日目は、
「じっくりと時間をかけ、長めにセックスして、セックスの良さをたっぷりと味合わせるべし」
そうすれば、五日目には
「すっかりセックスの悦びを覚え、自分からも求めてくるようになる」
とのことです。
処女の痛みを乗り越えて、セックスの快楽、ひいては「中イキ」に到達できるのにかかる時間は個人差が大きく、一生「中イキ」に到達できない女性も、決して少なくありません。
しかし、せっかく結婚したのですから普段一緒にいる時間が心地よいのはもちろん、ラブタイムを心待ちにしてしまうような夫婦になれたら嬉しいですよね。
気持ちいいラブタイムは、最高の心の薬?!
さらに「婚礼秘事袋」は、五日間をかけて「新鉢を割」った後の夫婦のセックスのことを、こう書いています。
「交合の味、極まれば万の憂きを凌ぐ妙薬、茎(まら)は積薬(しゃくやく)の長たり」
「茎は積薬の長」は、「酒は百薬の長」に引っかけているようです。いいセックスは、夫婦の絆を確かな物にし、どんな憂欝をも吹き飛ばしてしまいます。そう考えると、二人でラブタイムの心地よさを追求するのは、パートナーのためにも素敵なことだとは思いませんか?
はじめてのセックスが上手く行かず、セックスを嫌いになってしまう男性や女性も、決して少なくありません。「五日間」というのはあくまで一つの目安に過ぎませんが、時間を十分にかけることで、はじめてのセックスをよいものにできるよう、男女とも思いやりを持って工夫していきましょう。

1970年生まれ。1996年より、漫画原作者として活動。2009年、日刊誌連載「日本性史」にて、アダルトライターとして活動開始。
スマートフォンアプリ「セックスの日本史」、女性向けWEBサイト連載「蔦葛物語」「オンナとオトコの日本史/世界史」などの著作がある。
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