マスカットといえば

マスカットと聞くと、つい安室奈美恵さんのヒットソング「愛してマスカット」を連想してしまう加藤ですが…歳がバレるので止めます(笑)。
マスカットは、ご存じの通りブドウの一種。和名は「ヨーロッパブドウ」です。地中海地方が原産で、たくさんの品種があるブドウの中でも古くから栽培されてきたものの1つであることは間違いなく、かのクレオパトラも食していたといわれています。
マスカットには品種がいくつかあり、イタリアのピエモンテ地方でワインの原料となる「モスカート」、ドイツの甘口ワインの原料となる「モリオ・ムスカート」、ハンガリーの「マスカット・オットネル」などワインとして消費されものが目立ちます。日本では岡山県辺りで栽培されている高級ブドウ「マスカット・オブ・アレキサンドリア」が有名ですよね。
マスカットはりんごや梨などの果物と比較してカロリーが高く、糖分が吸収されやすく、しかも、エネルギーへと変換されやすい点が注目されています。(蛇足ですが、マスカットのスィートを食べ過ぎると太る原因になるのでご用心。)
面白いことに、マスカットには果肉にアミノ酸やカルボキシル酸やビタミンが含まれているだけでなく、果皮や種にも栄養成分が含まれている点で無駄がありません。
とくに、種に含まれている「OPC(オリゴメリックプロアントシアニジン)」という抗酸化成分にいま注目が集まっています。
少し前に「フランス海岸松の樹皮」を配合したペットボトル入り緑茶がブームになりましたが、これに含まれている成分も同じOPC。"赤ワインを多く飲むフランス人に虚血性心疾患の人が少ない"という、いわゆる「フレンチパラドクス」も、その理由はOPCにあるようです。ちなみに、OPCの発見者もフランスのジャック・マスケリエ博士。1947年のことです。
マスカットはお肌の味方
具体的には、毛細血管の血の巡りをよくしたり、活性酸素を除去したりという作用がある物質ですが、女性に嬉しいことにお肌に対しての働きも持っています。
それは、肌の酸化を防ぐだけでなく、肌のたんぱく質の形成に関与することで、肌に弾力や透明感を与えるという働きです。

なぜか不思議なことに、OPCの美容効果に注目したのが漢方の先進国である中国。
楊貴妃の時代にはなかったはずですが、現在の中国ではマスカットを原料とした化粧水や乳液、クリームから洗顔パックまでさまざまな種類の化粧品が売られているそうです。
ちなみに、マスカットという言葉には「麝香(じゃこう)の香りがする」という意味もあります。マスカットの持つ強い香りの比喩なのでしょうか。麝香とは、雄のジャコウジカの腹部にある香嚢腺から得た分泌物を乾燥したもの。
香料や漢方薬として用いられてきたものですが、"ムスク"として知られる香料と同一。
普段は単独で行動するジャコウジカが雌に自分の居場所を知らせるための「性フェロモン」が麝香ではないかとの説もあります。麝香の香りには異性を誘惑する力があるといわれているのもその辺りからでしょうか。
ひょっとすると、マスカットの香りにも、気になる異性を誘惑する魔力がそっと忍びこんでいるのかもしれませんね。
薬剤師。1969年東京薬科大学卒業。
1992年伝説のクイズ番組『カルトQ』(フジテレビ系)で最高得点を記録し優勝。これまで、調剤薬局運営や薬剤師ライターとして多数の健康雑誌に連載を持つなど活躍。