「きなこ」はそもそも何?
きなこは、大豆を炒って皮をむき、粉にしたもの。 改めてこのような説明は不要かもしれませんが、地味な存在ですよね。 大豆が原料となっているものといえば、醤油や味噌、納豆、豆腐、生揚げ、油揚げなどが挙げられます。
これらに比べると日常生活の中ではあまり食する機会が少ないことは間違いありません。
大抵は、お正月にお餅を焼いたときに「きなこ餅(安倍川餅ともいいますよね。)」にする程度ではないでしょうか。
きな粉は水分が少なく粉っぽいため、使い道が限られること、そして、料理に用いる場合には香ばしい香りがかえって邪魔になってしまうせいかもしれません。
ちなみに、きなこと呼ばれるようになったのは室町時代以降のこと。 奈良時代には僧侶が「まめつき」と呼んで薬として用いていたともいわれています。
大豆そのものと栄養的な差異は少ないのですが、炒ってあることで消化がよくなり、栄養素が吸収されやすい形になっているのが特徴です。 ここに薬としても用いられた秘密があるように思えます。
大豆の本当の素晴らしさとは?
きなこ100g中には、タンパク質が35.5g、脂質が23.4g、食物繊維が16.9g含まれており、カリウム、カルシウム、鉄、亜鉛などの必須ミネラルも豊富に含まれています。
最近は生大豆を微粉末にしたインスタントタイプの豆乳というものも売られていますが、吸収面では、当然ながらきなこの方が優れています。
大豆を炒ったことで、きなこにはほんのりとした甘みが生まれます。 じつは、この正体は「大豆オリゴ糖」。 腸の中でビフィズス菌のエサとなり、整腸作用をサポートしてくれる機能性の成分です。
また、うまみの源であるアミノ酸のひとつ「グルタミン酸」の量を各100gで比較すると、醤油で1.5g、味噌で2.2gなのに対し、きな粉は6.2g。 粉っぽさを割引けば、おいしさの部分ではかなり優位です。
大豆には大豆イソフラボンという女性ホルモンに似た働きをする物質が含まれていますが、日本人の日常の食生活からの摂取量は最初から計算に含まれているため、サプリメントでの過剰摂取問題の心配はありません。
栄養も腹もちもしっかり
むしろ、大豆がアメリカで1990年に提唱された「デザイナーズフーズ・プログラム」(ガン予防に有効な約40種類の植物性食品をまとめたもの)のピラミッドで頂点に立っていることからも、その機能性は評価すべきものと考えます。
じつは、かなり昔の話になってしまいますが、「きなこドリンクダイエット」というものが流行したことがありました。(1985年の話ですから、記憶にない方がほとんどかもしれませんが。)
これは、きなこ10g(大さじ2杯)を200ccの温かい牛乳に溶いて飲むというもの。南横浜病院の長井名誉院長が提案して話題となったもの。
栄養面もさることながら、腹もちもよいのが当時人気となった秘密のようです。 きなこ餅だけではなくて、もっときなこを毎日の食生活に取り入れてみてはいかかでしょうか?
薬剤師。1969年東京薬科大学卒業。
1992年伝説のクイズ番組『カルトQ』(フジテレビ系)で最高得点を記録し優勝。これまで、調剤薬局運営や薬剤師ライターとして多数の健康雑誌に連載を持つなど活躍。