ワイルドヤムとは?
ワイルドヤムとは、"天然のヤムイモ"を指す言葉です。ヤムイモという言葉自体が農学の分野で用いられている専門用語なため、話が難しくなってしまっているようです。
その定義はといえば、「ヤマノイモ科ヤマノイモ属に属し、人間が利用している有用植物の総称」ということ。
簡単にいえば、八百屋さんで普通に売られているナガイモやツクネイモ、イチョウイモ、ジネンジョなどのいわゆる「山芋」はみんなヤムイモの仲間。ちなみに、アフリカでも約4億人がヤムイモを主食としています。
ただし、ワイルドヤムといった場合には、メキシコ原産で北米中西部から東部に自生している品種を指すことが多いようです。なにしろ、世界各地には熱帯から温帯にかけて600~700もの種があるようですから…。
日本でも"トロロは精がつく"といわれたり、漢方でも「山薬(さんやく)」と呼ばれる生薬として用いられているように、ワイルドヤムにも滋養強壮の働きがあります。
とくに注目すべきなのは「ジオスゲニン」という成分が豊富に含まれていることです。ジオスゲニンは、サポニンの一種(水溶液を振ると持続性の泡を生じる界面活性作用のある物質)。体内では女性ホルモンのひとつ「プロゲステロン」に変換されます。
これには、1940年にアメリカの科学者がジオスゲニンを原料として、プロゲステロンなどのホルモンを合成する方法を発見。シンテックス社という医薬品メーカーを興して大儲けしたというエピソードがあります。1970年頃までは、この方法で合成が行われていたそうです。
女性ホルモンのバランスを整える
ご存じの通り、プロゲステロンは排卵から次の生理までのあいだに分泌されるホルモン。排卵前に優位となる別の女性ホルモン「エストロゲン」とのバランスが崩れた場合、生理不順や生理痛などの女性特有の症状が起こるとされています。
このため、ワイルドヤムを摂取すると、結果的にプロゲステロンの原料が送り込まれることになり、女性ホルモンのバランスを整えることが期待できます。
さらに、最近の研究では、ジオスゲニンの一部は体内でDHEA(デヒドロエピアンドロステロン)にも変換されることが分かりました。
DHEAは、そのままでは弱い男性ホルモンに似た作用を持っていますが、体内で代謝されると男性ホルモン(テストステロン)にも女性ホルモン(エストラジオール)にもなることができるという不思議なホルモン。
アメリカではワイルドヤムから抽出したものが 「抗老化ホルモン」のサプリメントとして売られているほどです。
ワイルドヤムがすごいのは、ホルモンそのものではないので危険性がないことと、必要な分だけがホルモンとなるので、より女性らしさを磨く(例えば、バストアップなど)だけでなく、気になる"忍び寄るお肌の曲がり角"にも対抗しうる存在であることでしょうか。
この他、ワイルドヤムには「ムチン」という水溶性の食物繊維も含まれており、粘膜を保護して炎症を鎮める働きもあります。
薬剤師。1969年東京薬科大学卒業。
1992年伝説のクイズ番組『カルトQ』(フジテレビ系)で最高得点を記録し優勝。これまで、調剤薬局運営や薬剤師ライターとして多数の健康雑誌に連載を持つなど活躍。