その昔、カシスは嫌われていた!?
カシスって言葉、これ、フランス語なんです。日本語だと「黒房すぐり」、英語だと「ブラックカラント」、中国語だと「黒加倫(くろかりん)」というように、世界各国でいろんな呼び名があります。日本ですと、カシスのリキュールが一番有名かもしれません。カシスソーダのあの綺麗な色調と独特の香りは印象的ですよね。カシスは古代よりヨーロッパの山奥などに自生していたものの、誰も食べようとはしなかったようです。黒色の食べ物を忌み嫌う文化がそうさせたのかもしれません。

カシスの実が食べられるものであるといった最初の人間は、ルネッサンス期の植物学者ガスパール・ポアンであったといわれています。そして、1712年にはフランスでモンタラン神父により「カシスの驚異」という本が出版され、"カシスの搾り汁は万病に効く秘薬であり、不老不死の神の薬である"と紹介されています。18世紀半ばにはフランス・プルゴーニュ地方のワイン畑の一角で、薬用としてぶどうと交互に栽培されるようになりました。
そして1841年、やはりフランスのディジョンでラグットという人がカシスを用いたリキュールを発案し、売り出しました。これが今日のカシスリキュールのルーツです。カシスはベリーの一種であり、ビタミンCやビタミンE、マグネシウムや鉄分などのミネラルも豊富に含まれています。ブルーベリーやラズベリー、ストロベリーなどのベリー類と比較すると、特徴的なことが1つあります。
それは、抗酸化作用を持つ成分であるポリフェノールを断トツに含んでおり(100g中約1200mg)、さらにポリフェノールの1つである赤紫色の色素・アントシアニンも生果実で比較すると、ブルーベリーの約5倍(100g中約700mg)も含まれています。
カシスリキュールを飲むときは…

ブルーベリーが目によいことはかなり知られていますが、カシスの場合、目の疲れに対してや暗視力の改善効果という点では、ブルーベリーやビルベリーの数十倍のパワーがあるのだそうです。カシスのポリフェノールについては、明治製菓が研究しており、興味深いデータが得られています。
それは、末梢血管での血流を改善するというもの。肩こりや冷え性にも効果が期待できますが、顔の末梢血管の血流も改善するので、なんと!目の下のクマの解消も期待できるという結果になりました。もちろん、これはカシスから抽出したポリフェノールを用いてのデータですので、カシスそのもので同様に結果が再現されるというものではありませんが、カシスリキュールを使ったカクテルやカシスのジャム、カシスのサプリメントを召し上がるときにも"カシスって、目にもいいし、目の下のクマにもいいんだ"ってことを思い忍ばせると、きっと御利益があることと思います。
薬剤師。1969年東京薬科大学卒業。
1992年伝説のクイズ番組『カルトQ』(フジテレビ系)で最高得点を記録し優勝。これまで、調剤薬局運営や薬剤師ライターとして多数の健康雑誌に連載を持つなど活躍。