25.000回往復して、やっと500g

"銀座のミツバチ"ってご存じですか?銀座3丁目の11階建てのビルの屋上に巣箱が置かれ、10万匹ものミツバチが飼われているんです。
ビルばっかりの摩天楼のような銀座。ミツバチがどうやって蜜を集めているのか不思議といえば不思議ですよね。
じつは、ミツバチの行動範囲は4km四方もあります。銀座の街路樹に咲く花だけじゃなくて、皇居や浜離宮庭園など緑が豊かなところにも足を(羽を?)延ばしているからなのだそうです。
蜂の巣1つには1匹の女王蜂と、1万匹以上の働き蜂(=ミツバチ。本来は雌蜂ですが、生殖器が退化して中性なのだそうです。)
繁殖期に現れる2000匹程度の雄蜂がいて、巨大な社会が構成されています。
ミツバチは、花の蜜を吸い取り、お腹の部分に蓄えて巣に持ち帰りますが、1回に0.02gの蜜しか蓄えられないのだそうです。つまり、市販の500gの瓶入りハチミツ1本は、ミツバチが250.000回往復してやっと得られる量なのですから驚きです。
ミツバチが花から花へと飛び回る際、同時に花粉が体に付くことにより、植物から植物へと花粉を運ぶ役割も担っています。リンゴやサクランボ、ヒマワリ、スイカなど多くの作物も、人工受精ではない場合には花粉の媒介をミツバチに頼っています。ちなみに銀座の街路樹のソメイヨシノの開花でもミツバチの果たしている役割は大きいそうです。
赤ちゃんプレイにハチミツ
ところで、ハチミツってミツバチが集めた花の蜜のことかだと思っている人、それはちょっと違いますよ。
ミツバチの体内に取り込まれた花の蜜は、ミツバチの唾液と酵素によって分解され、蜂の巣の中にある六角形の房室の中に蓄えられます。そして水分が飛んで濃縮されたものを房室から分離し、ろ過したものがハチミツなのです。
ちなみに、女王蜂になるための「ローヤルゼリー」、キャンドルの原料になったり、サプリメントのソフトカプセルの内容物の乳化に用いる「ミツロウ」、巣を有害菌から守る働きがあるといわれる「プロポリス」も蜂自身が作り出したものです。

ハチミツは8割方が糖分で、とくにブドウ糖と果糖が大半を占めています。特徴的なのは、他にもトレハロースやイソマルトースなど25種類以上の糖分が含まれていることと、砂糖と異なり、ビタミンやミネラル、アミノ酸が含まれている点です。
1gで3000カロリー近くの高いエネルギーがあり、吸収されやすいのもポイント。ハチミツは、ミツバチがどんな種類の花を訪れたかによって色や味が変わってきます。
一般的には色が薄いほど風味が軽く、色が濃いほど味が強くなるといわれています。
しかし、好みの問題であり、それによる優劣はないものと思ってよいでしょう。(色が濃いものの方がミネラルなどの灰分は多いですが。)古来より薬としても用いられきたハチミツ。口内炎の患部に塗ったりもしますが、変わったところでは漢方薬には「蜜煎導(ミツセンドウ)」というものがあります。
これは、ハチミツを鍋で煮詰めて水分を飛ばしたものを細く棒状に伸ばして作った坐薬。便秘のときに肛門からゆっくりと差し込むことで効果があるといわれています。
なお、ハチミツを夜に「赤ちゃんプレイ」に用いるのはご自由ですが、間違っても1歳未満の赤ちゃんには与えないでください。これは、ハチミツにボツリヌス菌の胞子や芽胞が含まれていることがあるため。消化器官が未発達の乳児には危険な場合があるからです。
薬剤師。1969年東京薬科大学卒業。
1992年伝説のクイズ番組『カルトQ』(フジテレビ系)で最高得点を記録し優勝。これまで、調剤薬局運営や薬剤師ライターとして多数の健康雑誌に連載を持つなど活躍。