マンゴーは愛と幸福をもたらす果実だった!?
マンゴーは、東南アジアやインドを原産とするウルシ科の植物です。甘くてネットリとしたマンゴー独特の食感、ほのかな酸味、そして濃厚な香り。
ご存知の通り、もともと数年前から、香港で有名な「マンゴープリン」やフィリピンの「ドライマンゴー」がちょっとしたブームになっていました。
どうやらマンゴーの香りにはリラックス作用もあるらしく、乙女の癒しと食欲の両方を満たしたのがブームの原因!?
そこにさらに火をつけたのが、かの宮崎県の東国原知事。完熟マンゴーのプレミアムブランドである「太陽のたまご」を引っ提げて全国を行脚したことで、マンゴーそのものの人気もさらに急上昇したのでした。
マンゴーは、マンゴスチンやチェリモヤとともに世界3大果実の1つとされ、「果物の女王」とも呼ばれています。
紀元前5世紀頃に仏教の僧侶が東アジアに伝えたといわれ、ブッダがマンゴーの林で休憩を取ったといういい伝えもあります。
また、インドでは「聖なる樹」として、多くの実をつける様子が子宝に恵まれる象徴に、あるいは、恋人たちに幸福をもたらす「愛の果物」として縁結びの象徴ともされているようです。
日本には明治時代にお目見えしたようですが、国内での本格的な栽培が始まったのは昭和40年代後半といわれています。

九州南部や沖縄で栽培が盛んなマンゴーですが、まだまだ海外からの輸入品が大多数を占め、2006年の財務省貿易統計によれば、マンゴーの44%がフィリピン産(ペリカンマンゴーという品種がメイン)、35%がメキシコ産(日本と同じアップルマンゴーがメイン。完熟すると皮が赤くなることからその名前がついたそうです。)とのこと。
海外産のものと国内産のものの違いが何かといえば、国内産の方が繊維質が少ないため、舌の上でトロッととろける食感が違うこと。国内産の方だと完熟のものでも流通が可能だという程度。
「マンゴー」と「美肌」の真実とは?
さて、マンゴーの栄養についても少し触れておきましょう。五訂日本食品標準成分表から一部抜粋すると、マンゴー100g中に含まれる栄養成分は、下記の通り。
- エネルギー
- 64kcal
- タンパク質
- 0.6g
- 炭水化物
- 18.1g
- カロテン
- 610μg
- ビタミンB1
- 0.04mg
- ビタミンB2
- 0.06mg
- ナイアシン
- 0.7mg
- ビタミンC
- 20mg
- 葉酸
- 83μg
そう。意外なことに、マンゴーは糖度が高くて甘い割にはカロリーは低め。しかも、抗酸化力があり、体内でビタミンAに変化して皮膚や粘膜を正常に保つ「カロテン」が果実の中でほぼトップ(ちなみに、柿の15倍、ビワの2倍)。
そして、マンゴーは造血作用があり、貧血予防に役立つほか、最近は妊娠中に必要なビタミンとして注目の葉酸が、100gのマンゴーのみで1日に必要な量の4割も摂れてしまう辺りが正直、凄い!
このほか、黄色い色素にはエリオトシリンというフラボノイドの一種も含まれており、ビタミンCの吸収を助けてくれます。
もともと光線が強い地域に成育する植物の果実ですから、光線から自分を守るために抗酸化力が強いのは当然といえば当然。マンゴーを食べれば美肌につながることはあながち否定できないのです。
ところで、冒頭に書きましたがマンゴーはウルシ科の植物。ウルシかぶれのある人が食べたり、マンゴーエキス入りのコスメを用いた場合、口の回りがヘルペスみたいな状態にかぶれることがあります。ご注意あそばせ。
薬剤師。1969年東京薬科大学卒業。
1992年伝説のクイズ番組『カルトQ』(フジテレビ系)で最高得点を記録し優勝。これまで、調剤薬局運営や薬剤師ライターとして多数の健康雑誌に連載を持つなど活躍。