本当にあった!ラブ物語

【第六話】愛と誘惑の香り

公開日: 2020/04/03  最終更新日: 2024/06/07
本当にあった!ラブ物語
     
    第一章 香りに包まれる不安

    宅配便を受け取ると、私はリビングのソファに急いだ。梱包をほどく手元には、心のソワソワがそのまま表れている。一方で、心の半分では、夫のうつむいた顔が浮かんでいた。

    仕事の疲れからか、ため息をつくことが増えている夫。ベッドでも、喉の奥から声と勇気を絞り出したような私の誘いに、「ごめん」とひと言、申し訳なさそうに答える夫。それ以来、季節がふたつ行き過ぎる間、私からは新たな勇気の粒は出てこない。

    細い針が胸をつつくような痛みをやり過ごして、私は箱から香水を取り出し、シュッとひと吹きする。窓から差し込む日光に、香水の霧が七色の光を見せた。「あ、いい香り…」

    第一章 香りに包まれる不安お悩み解決バナー

    (これを使って、もう一度、夫を誘う勇気が出ますように…。でも…たとえ何も変わらなくても、普段使いの香水にすればいい…)

    甘さと清潔感の漂う香りを背中で感じながらリビングを出ると、香水のボトルをバスルームの棚に片づけた。

    ―週末の夜。入浴を終えると、首筋と太ももに香水を吹きかけた。この時は、香水の霧だけが、知っていたかもしれない。私たち夫婦に、この後、どんな夜が訪れるのか…。

    第二章 勇気の粒

    ベッドルームに入ると、暗い部屋の中、スマホの明かりが夫の顏を照らし出していた。「どう?」ベッドにもぐり、ゲームの調子を覗き込む。

    しばらく夫と一緒にスマホの画面を眺めながら話し、ゲームが一段落したところで、私は、「ねぇ」と少しだけ夫の耳元に口を近づけた。

    そして、その勢いで「ちょっとだけ、ギューッてして、ヒロくん」と続ける。言い終えて、カーッと全身が熱くなる。直後、夫はどう思ったのかと考えると、今度は、一気に体から血の気が引くような冷たさを感じる。

    「しょうがないなぁ、ナツは」混乱する思考の中で、思いがけない言葉が飛び込むと同時に、夫の腕が私を包み込んだ。

    「え?」驚く私の体を、夫は「こうしてほしいんでしょ?」とギュッと抱きしめた。彼の胸の中で黙って頷くと、「なんかナツ、すっごくいい匂いするよ」と、私の髪にたくさんキスをする。

    第二章 勇気の粒

    「何か、つけてる?」私の背中を柔らかく撫でながら、夫は、髪や首筋に何度も唇を寄せる。「うん…香水…」「そうなんだ。どこに?ここ?こっち?」胸やウエスト、お尻を指先でつつきながら、夫はいたずらっぽく視線を合わせる。

    笑ってごまかしながら目を逸らし、夫の脚の間に手を伸ばすと、想像よりもずっと硬い塊が手に触れた。

    第三章 快楽の香り

    「握って」…彼自身に触れた瞬間に、夫は、湿度の高い声で求めた。その声に導かれ、私は、彼自身を手のひらで包み、そっと上下させる。

    「うぅぅ…」快楽のこぼれが彼の口から流れると、私の手は、触れ合いのなかったこの何ヶ月かを忘れたように、なめらかに動き始めた。

    第三章 快楽の香り

    「ナツ、だめ…。我慢できない」半分苦しそうに言うと、夫は、私の泉に顏をうずめると同時に、彼自身を私の口元へと運んだ。

    「あぁぁ…ナツ…いい香り…どうしよう、俺、止まんない」香水を吹きつけた太ももに何度も口づけ、優しく甘噛み、ときに激しいほどに吸い付く夫の舌が、私を快感の渦に引き込んでいく。

    「ヒロくん…だめ…私も、我慢できない…」太ももから泉をかき回すように這う夫の舌に、私は、衝動を抑えきれない。仰向けになった彼にまたがり、熱く溢れる泉に、彼自身を沈み込める。

    第三章 快楽の香り

    「あぁぁぁ…」二人の声が同時にベッドに染みこむと、夫は下から私を突き上げ、私はその動きに合わせて腰を前後させる。

    「あぁぁ…ナツ…だめ…俺、イキそう…」何度か体位を変えたあと、後ろから激しく私の奥を突きながら、夫が声を絞り出した。

    腰を掴む夫の手に、さらに力が入るのを感じながら、私も弾けそうな快楽を訴えると、夫の塊はグンと大きさと硬さを増し、直後、私の中で熱く弾けた。その熱に、私のカラダも激しい快楽の谷底へと突き落とされる。

    第四章 愛の宣言

    それから毎日私は、あの香水を使っている。今日は、久々に二人で食事。

    待ち合わせ場所で会うと、夫のほうから手を繋いできた。「今日も、リビドー ベリーロゼ、つけてるね」笑ってこちらを向く夫に、私は、驚いて目を合わせる。

    どうして夫は、この香水の名前を知っているの…?

    「実は俺も、広告で見たことあるんだ」耳元で囁いてそっと口づけると、夫は続けた。

    「前にナツが誘ってくれた時、部署異動の直後で疲れてて…。ナツのこと大好きなのに、うまく愛せなくて…。でも、家であの瓶を見た時、ナツは俺が大変な時でも優しく労ってくれるなって気づいて。もちろん、仕事だって大事だけど、一番大事なのは可愛い妻なんだって思い出せたんだ。ナツのおかげだよ。本当にありがとう」

    「そうだったんだね…嬉しい。一度断られちゃったから、その後は自信を持てなくて。でも、もう一度だけでも誘いたくて、香水をお守りにしようって思ったの。でも、ヒロくん、ずっと、好きでいてくれたんだね」

    第四章 愛の宣言

    照れながら視線を彼に向けると、「これからもずっと愛してるよ」と温かい夫の唇が近づいてきた。

    ~第六話・完~

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