佳人薄命!悲劇のヒロイン「夕顔」
「佳人薄命」を形にしたような女性が夕顔(ゆうがお)です。夕顔は頭中将(とうのちゅうじょう)の側室でしたが、正室の嫉妬で都を追われ、娘と共に淋しく暮らしていました。そんな時、源氏と出会った夕顔は、互いの素性を知らぬまま深い恋に落ちます。
少女漫画のような出会い!?


二人の出会いは、源氏が乳母(めのと)の病気見舞いに五条の家を訪ねた時でした。源氏は隣家の垣根に、夕顔の花が咲いているのを見つけます。
その美しさに惹かれ、従者に取らせようとすると、「手で提げては不格好ですから」と、一輪を扇に乗せて差し出したのが夕顔でした。その扇には
「心あてに それかとぞ見る 白露の 光添へたる 夕顔の花」
(当て推量に貴方さまでしょうかと思います 白露の光を加えて美しい夕顔の花は)
との和歌がしたためられていました。源氏は深く感心し、
「寄りてこそ それかとも見め 黄昏れに ほのぼの見つる 花の夕顔」
(もっと近寄って誰ともはっきり見たらどうでしょう 黄昏時にぼんやりと見えた花の夕顔を)
と返歌を送り、やがて源氏は夕顔の元へ通うようになります。
平安時代のロマンスのはじまり方が、よくわかるエピソードです。その後も源氏と夕顔は、互いの素性を知らぬままに逢瀬を続けます。
あっけない幕切れ

源氏は夕顔を側室に迎えようとしますが、夕顔はこれを固辞しました。そんな時、悲劇が起こります。源氏が夕顔と、今は使われていない廃屋で逢瀬を楽しんでいた時、正体不明の怨霊が現れるのです。
怨霊は
「私がどれほどあなたを愛しているかしれないのに、私ではなく、こんな平凡な女と逢瀬を楽しむなんてひどすぎる」
と源氏に恨み言を述べて消えます。そして間もなく、夕顔はあっけなく息を引き取ってしまうのです。
この怨霊の正体は、六条御息所の生き霊とも言われていますが、物語中で明らかにされることはありません(欠落部分に書かれていた可能性もあります)。夕顔の死後、彼女の素性を知った源氏は娘の玉鬘を引き取ろうとしますが、果たせませんでした。
現代の夕顔タイプとは?
源氏が夕顔に強く惹きつけられた最大のポイントは、逢瀬のたびに源氏に身も心も全て預け、源氏を頼り切っています!という風情だったと言います。
例えば、現代ではこういった女性が夕顔タイプと言えるかもしれません。
- パートナーと会える時間が短くても、その会えた時間を目一杯楽しめる女性
- 甘え上手で、全力で愛情表現をする女性
相手と一緒にいられることが嬉しい!という気持ちを全力でアピールすると、自然と男性も強く惹きつけられるのかもしれませんね。
しかし、そうは言ってもなかなか素直になれなくて…という女性も多いはず。そんなときは、
- 普段はハキハキとした話し方でも、パートナーの前でだけは甘えた口調にする
- お家デートのときは、自分からパートナーに抱きついてみる
などの方法を試してみてはいかがでしょうか?
パートナーとの関係を深めるために、思い切って身も心も全て相手にあずけていますよ!という態度を示してみるのも1つの方法かもしれませんね。

1970年生まれ。1996年より、漫画原作者として活動。2009年、日刊誌連載「日本性史」にて、アダルトライターとして活動開始。
スマートフォンアプリ「セックスの日本史」、女性向けWEBサイト連載「蔦葛物語」「オンナとオトコの日本史/世界史」などの著作がある。