光源氏と藤壺の出会い
『源氏物語』の恋とセックスについて語るなら、まずは光源氏と藤壷(ふじつぼ)の物語から始めなければならないでしょう。
藤壷は、源氏の父、桐壺帝(きりつぼのみかど)の中宮(正妻)です。源氏の母である桐壺更衣(きりつぼのこうい)を失った桐壺帝は、深い悲しみに暮れますが、彼女とうり二つであった藤壷と出会い、生きる意欲を取り戻します。藤壷は源氏の養育にもあたり、幼い源氏は、いつしか彼女に恋心を抱くようになります。源氏と藤壷は、わずか5歳しか年が離れていませんでした。
初恋の行方と藤壺の決意
源氏の元服(成人)によって、一度は会えなくなってしまった2人でしたが、藤壷が病気で里に下がっていたとき、彼女を訪ねた源氏は半ば強引に関係を持ちます。そのとき、藤壷は源氏の子を身ごもります。このときの子が後に冷泉帝(れいぜいのみかど)になります。
第七段「紅葉賀」(もみじのが)では、宮中で舞を披露した源氏が、藤壷に
「心の乱れを押さえて、袖を振って舞った私の心をわかっていただけたでしょうか」
と文を送り、藤壷は
「異国の舞ですから、袖を振って舞うのにどのような意味があるのかは存じませんが、あなたの舞の一挙一動には感じ入りました」
と、素っ気ない返事を返します。
しかし源氏は、その素っ気なさに気づかず、浮かれた気持ちになるのです。そんな源氏が現実を突きつけられるのは、産まれた若君を見たときです。鈍感な源氏も、若君が自分の子であることに気づき、動揺します。子どもをあくまで桐壺帝の子として育てることにした藤壷は、源氏との連絡を断ちます。源氏はなおも藤壷に求愛し続けますが、藤壷は拒み続け、ついには出家するのです。
現代版!藤壺タイプの女性とは?
2人の愛は一見、源氏からの一方的な片恋にも見えますが、藤壷も深く源氏のことを愛していました。なればこそ、源氏を守るため、産まれた子をあくまで、桐壺帝の子として育てたのです。
源氏からの熱烈なアプローチを受けながらも、一時の感情に流されること無く周囲の「和」を最優先する藤壷中宮。 現代では、
- リーダーシップで引っ張っていくよりも、気配りで周囲をまとめることが得意な女性
- すぐに誰かに頼るのではなく、できるだけ自分の力でやり遂げよう!と考えて仕事などに臨む女性
などが、藤壷タイプと言えるかもしれません。
藤壺タイプの女性が恋を進めるうえで重要なこととは?
平安時代の「政略結婚」に比べれば、現代は、自分の力で何とかできない問題は少ないでしょう。「自分が耐えればOK」と忍んでしまうのではなく、目の前の問題をひとつひとつ解決して恋を進めていくのがいいのではないでしょうか。
たとえば付き合っている人がいても他に好きだと思える人が現れてしまったとき、今付き合っている人との情を優先して気持ちを抑えるのではなく、きっちり彼と別れてから、新しい彼との関係を築き始めればいいのです。
すぐに感情に流されて行動するのではなく、誠実に問題を対処してから行動するあなたの姿勢に、きっと周りは「応援モード」になって恋愛をサポートしてくれることでしょう。
1970年生まれ。1996年より、漫画原作者として活動。2009年、日刊誌連載「日本性史」にて、アダルトライターとして活動開始。
スマートフォンアプリ「セックスの日本史」、女性向けWEBサイト連載「蔦葛物語」「オンナとオトコの日本史/世界史」などの著作がある。