いくつになっても輝き続ける…「源典侍」
源典侍(げんのないしのすけ)は、いくつになっても色欲を保ち続けている、アクティブな人物として描かれています。物語に登場した時点で、彼女はすでに五十七、八歳でした。平均年齢四十歳未満の時代ですから、現代の感覚で見れば、七、八十歳くらいでしょうか。しかし色好みで知られる彼女は、まだまだ現役でした。
教養や知性に惹かれた光源氏
申し添えておくと、源典侍は、単なる色好みではなく、かつては容色に優れ、また、知性や教養も若い頃から豊かであり、老いてなお、宮廷の人気者として描かれています。容色ではなく、その教養や知性に惹かれて、源氏は彼女の元を幾度も訪ねるうち、うっかり深い仲になってしまいます。
「君し来ば 手馴の駒に 刈り飼はん 盛り過ぎたる 下葉なりとも」
(あなたがいらしたならば良く馴れた馬に秣(まぐさ)を刈ってやりましょう 盛りの過ぎた下草であっても)
と、色気たっぷりの歌を寄越す源典侍に、源氏は
「笹分けば 人や咎めん いつとなく 駒馴らすめる 森の木隠れ」
(笹を分けて入って行ったら人が注意しましょう いつでも馬を懐けている森の木陰では厄介なことだから)
と、さりげなく距離を置こうとします。
光源氏が距離を置こうとしているのを悟った源典侍は、
「立ち濡るる 人しもあらじ 東屋に うたてもかかる 雨そそぎかな」
(誰も訪れて来て濡れる人もいない東屋に 嫌な雨垂れが落ちて来ます)
と、皮肉を返します。これには源氏もさすがに嫌になって、
「人妻は あなわづらはし 東屋の まやのあまりも 馴れじとぞ思ふ」
(人妻はもう面倒です あまり親しくなるまいと思います)
と彼女の元を離れようとしたところに、何と、源氏の親友でライバルの、頭中将が踏み込んできます。
中将も源典侍と関係を持っていたのです。二人は、喧嘩をはじめたふりをして、さりげなく屋敷を離れ、「彼女の元を離れる作戦が無事に成功した」とお互いに笑い合うのでした。
いつまでも輝き続けるためのコツ
物語における彼女は、ほんの脇役ですが、七十歳まで生きたことが描かれたことからも、紫式部が彼女を気に入っていたことが読み取れます。紫式部は、そんな彼女の姿を通して、私たちに「年齢に関係なく恋愛やラブタイムを積極的に楽しみましょう!」ということを伝えたかったのかもしれません。彼女のような、恋愛への欲求が若い頃から全然衰えない!という源典侍タイプの女性も、もちろん恥ずかしがって隠す必要はないのです。現代で言うと、例えばこんな女性が「源典侍」タイプと言えるのではないでしょうか。
- 若い頃から沢山の男性からずっとモテモテなタイプ
- いくつになっても恋愛を全力で楽しんでいるタイプ
ということを意識すると、いつまでも輝き続けられるかもしれません!
幸せへの道
ちなみに、江戸時代の名奉行・大岡越前(おおおかえちぜん)の母は、息子から「女の性欲はいくつまであるのか」と訪ねられたとき、黙って火鉢の灰をかき回したそうです。「灰になるまで」ということですね。つまり、いつの時代でも年齢に関係なく恋愛やラブタイムを楽しむ女性が多かったのでしょう。また、源典侍が老いてなお宮廷の人気者だった理由として、見た目だけでなく、知性や教養が備わっていたことが挙げられます。そこで、現代の「源典侍」タイプの女性は彼女と同じように、
- 「もう若くないから」と思わず、自分を磨き続ける意思を持つ
- 見た目だけでなく、趣味や習い事に打ち込むことで内面も磨く
ということを意識すると、いつまでも輝き続けられるかもしれません!年をとったから恋愛感情は捨てなければ…と思い込む必要はありません。いつまでも現役でOK!夫にときめき続ける事で、元々持っているあなたの魅力はさらに増すはず。是非いつまでも豊かな恋愛やラブタイムを楽しんでくださいね。
1970年生まれ。1996年より、漫画原作者として活動。2009年、日刊誌連載「日本性史」にて、アダルトライターとして活動開始。
スマートフォンアプリ「セックスの日本史」、女性向けWEBサイト連載「蔦葛物語」「オンナとオトコの日本史/世界史」などの著作がある。