戦国大名・松永久秀のために書かれたセックス指南書『黄素妙論』のご紹介も、ついに最終回です。今回は、男性の年齢に合ったセックス回数について書かれた部分のご紹介です。
度を越したセックスはよくない!?

『黄素妙論』では、セックス回数と年齢の関係について、次のように記載されています。
「男子が二十歳になったならば三日に一度もらしてください。三十歳になったならば五日に一度もらしてください。四十歳になったならば七日に一度もらしてください。五十歳以上は半月に一度もらしてください。六十四歳以上は無理に度を越してもらしてはなりません」
何しろ「人間五十年」の時代に書かれたものですから、そのまま受け入れない方がいいでしょう。1.5倍くらいに(20歳を30歳に、40歳を60歳に)して読むとちょうどいいのではないでしょうか。
セックスの回数が男性の健康に影響していた?

このような考え方がなされていたのは、実際に健康を削がれた例があったから…ということのようです。
「この頃みんな、この年齢と回数の関係を知らず、みだりに交合して、二十、三十歳の血気盛んで元気なのをいいことに、一日一夜の間に、精の液を三度、四度もらしたり、さらには、五、六度に及ぶ若者がいます。こういう人は、中年にもならないうちに、白髪が生じ、五体がやつれてしまいます。さらに、まだ老年に及ばないうちに、関節がこわばり、腰痛で曲がらず、最後には、諸々の病気が一斉に発症して、長命できるはずの命が縮まってしまいます。深く謹んでください」
過度のセックスで男性が体を壊す、あるいは死に至ることを、漢方では「腎虚」と呼んできました。「セックスで不老長寿になる」ための教科書である『黄素妙論』は、腎虚につながる過度のセックスを、厳しく戒めています。
しかし老人のセックスを決して否定してはいないことに注意してください。戒めているのは、老人の過度の「射精」です。セックスに熟達した男性は、射精しなくても、十分に肉体的・精神的快楽を得ることができます。
女性は、必ずしも射精だけが男性の快楽の全てでないことを理解し、パートナーの年齢に見合った、質の高いセックスを求めて行くようにするとよいでしょう。
パートナーを大切にする、愛のあるセックスが望ましいですね。
1970年生まれ。1996年より、漫画原作者として活動。2009年、日刊誌連載「日本性史」にて、アダルトライターとして活動開始。
スマートフォンアプリ「セックスの日本史」、女性向けWEBサイト連載「蔦葛物語」「オンナとオトコの日本史/世界史」などの著作がある。