戦国大名・松永久秀の依頼で書き下ろされたセックスマニュアル『黄素妙論』には、セックスを避けるべき時と場所が書かれています。
基本的には陰陽五行論に基づいているので、迷信と捉えられる点も多いのですが、きちんと健康に関することが書かれている節もあります。参考にできるポイントはぜひ知っておいていただきたいので、早速ご紹介しましょう。
戦国時代も、まずは身の安全が第一!
『黄素妙論』では、以下のような時にはセックスを避けたほうがよいとされています。これらの日にセックスをすると、自然の怒りを買い、命が奪われる…というのが理由。
陰陽五行論らしい考え方なのですが、よくよく考えてみると「まずは身の安全」という点において、よい判断とも言えるのではないでしょうか。
地震、台風、雷、噴火…緊急時のセックスはNG

「天地が地震のように震動して、大地が怒りの様相を呈している時。大風の吹く時。急に雨が降り出した時。」
地震や噴火などの天変地異の時は、「この世の名残に…!」という気持ちになりかねませんが、まずは身の安全を確保し、避難など適切な行動を取りましょう。
時は戦国時代。当時の家は大風で倒壊することもよくありましたので、セックスするより、いつでも避難できるようにしておくのが適切でした。
「急に雨が降り出した時」については…気圧の急変に弱い人は昔からいたので、「無理をしないように」とのことかもしれないですね。身を守るための注意事項でしょう。
「雷鳴が轟き、稲妻の光る時。月末と月初め。大寒の日。大暑の日。」
避雷針もなくコンクリ作りの建物もなかった時代です。落雷は屋内にいても充分な脅威でした。「セックスより身の安全」が『黄素妙論』のコンセプトのようです。命を落としてしまってはセックスもできませんからね。
月末と月初めにセックスが禁止されたのは、陰陽五行説から来ていると考えられます。旧暦で一番寒い時期である大寒(現在の暦では一月二十日頃)、一番暑い時期である大暑(現在の暦では七月二十日頃)が禁止されているのも同様です。確かに、寒すぎたり暑すぎたりするとセックスをしたいという気持ちは薄れてしまうかもしれませんね。無理にすべきではない…ということかもしれません。
特別な日のセックスにも注意

「日食の日。月食の日。庚申の日。甲子の日。立春と立夏の日。立秋と立冬の日。春分と秋分の日。夏至と冬至の日。五月五日の日。」
いずれも陰陽五行説から来る考えで、現代では迷信ですね。なんと当時には、庚申の日と甲子の日に身ごもった子は、盗人になるという俗説までありました。陰陽五行に基づく不思議な内容はさておき…みなさん、もうお分かりでしょう。天変地異の時は「セックスより身の安全」ですよね!日食、月食は現代でも注目されますが、時は戦国時代。今よりも特別なことと捉えられていたことは想像に難くありませんね。
さて、いかがでしたでしょうか。今回は、天候や暦にまつわる内容をご紹介しました。次回は場所、体調についてのタブーをご紹介いたします。お楽しみに。
1970年生まれ。1996年より、漫画原作者として活動。2009年、日刊誌連載「日本性史」にて、アダルトライターとして活動開始。
スマートフォンアプリ「セックスの日本史」、女性向けWEBサイト連載「蔦葛物語」「オンナとオトコの日本史/世界史」などの著作がある。