つがいの1羽が捕らえられると、残った1羽は死んでしまう?!

オシドリのオスは、つがいのメスを守るため、自分の身を犠牲にする行動で知られています。オスはタカなどの天敵を見つけると、羽をばたばたさせるなど、傷ついたふりをして自分に天敵を引き寄せ、メスの身を守るのです。
新潟県の民話によると、オシドリは、強い絆で結ばれたカモの夫婦を殺したことを悔やんで自殺した、猟師の夫婦の生まれ変わりだそうです。言い伝えでは、つがいの1羽を捕らえると、もう1羽がいなくなった相手を思い続けて死んでしまう、と言われています。「オシドリ」とは、「思い死ぬ鳥」から来ているという説もあります。
オシドリ夫婦=仲の良い夫婦は誤り?!

『放れ鴛(オシ)一すねすねて眠りけり』 と詠んだのは、小林一茶です。放れ鴛とは、つがいの相手を見つけることのできなかったオスのオシドリのことで、パートナーのいるオスは、放れ鴛から自分のパートナーを守るために必死になります。晩婚だった一茶は、放れ鴛が、自分の姿に重なって見えたのでしょう。 このように、強い絆で知られるオシドリは、夫婦相和の象徴とされています。
しかし、近年の観察と研究の結果、意外な事実が明らかになりました。オシドリのつがいは、毎年パートナーを替えるのです。しかも、一緒に過ごすのは交尾のときだけ。子育ても完全にメスまかせで、オスはまるで交尾にしか興味がないかのようです。
また、メスが茶色っぽい地味な外見をしているのに対し、オスはカラフルなだけでなくメスにはない美しい羽(イチョウ羽)を持っています。そしてメスに情熱的なダンスで何度もアタックして、夫婦となるのです。
なんだか人間の夫婦のよう?

交際を申し込む時は猛アタックで情熱的。なのにしばらくするとそっけなくなったり、他の女性に目移りしたり…人間でもありますよね。特にオシドリのオスのようにカラフルで美しい見た目をしている=お洒落でイケメンな男性は、自然と誘惑が多く気うつりしてしまいそうで心配です。
反対に女性側も、「そういえば前ほど愛情表現をしていない」とはっとした方もいらっしゃるかもしれません。その場合は、男性側が「そっけなくなった」と寂しく感じている事もありそうです。
愛する相手からの愛情表現は、やはり嬉しいもの。付き合いはじめのころを思い出して、「オシドリのオスのダンス」ほどではないにしろ、自ら情熱的な表現をしてみるのはいかがでしょうか。そしてできれば世間一般で使われる「オシドリ夫婦」の言葉の意味のように、いつまでも「たった一人の伴侶」として添い遂げていきたいものですよね。

1970年生まれ。1996年より、漫画原作者として活動。2009年、日刊誌連載「日本性史」にて、アダルトライターとして活動開始。
スマートフォンアプリ「セックスの日本史」、女性向けWEBサイト連載「蔦葛物語」「オンナとオトコの日本史/世界史」などの著作がある。