「ボノボ」って知っていますか?


ボノボはあまり知られていない動物ですが、チンパンジーと並び、進化の系統樹の中で、人類に最も近い類人猿です。アフリカ中央部に棲み、外見や大きさはチンパンジーに似ていて、樹上で暮らし、群れを作って生活します。果物や昆虫、小動物を食べる雑食性で、寿命は四十年くらいです。
日本の動物園でも飼育されておらずなかなか目にすることができない動物ですが、ヒトやチンパンジーといった近縁三種の中で、実はこの「ボノボ」には際だった特徴があるのです。
“同族殺し”をほとんどしない「ボノボ」

人類は戦争や殺人をします。チンパンジーにも子殺し、共食い、戦争などの行動が見られます。しかしボノボには、それらの「同族殺し」がほぼ見られないのです。その理由は、彼らが頻繁に、異性間・同性間でのセックスを行うからだと考えられています。つまりセックスによって、社会生活のストレスを軽減し、同族間のトラブルが発生しないようにしているようなのです。
チンパンジーのメスは発情すると陰部の性皮がふくらみ、交尾可能であることをオスに伝えます。そして、発情期以外にセックスすることはありません。これに対してボノボは、人類と同じように、外観から発情期を見分けることができず、通年でセックスします。また、ボノボはセックスの頻度も多く、しかも同性同士のセックスも頻繁に見られるのです。
ちなみにセックスと言っても必ずしも挿入を意味せず、「性器をこすりあわせる」「お尻をくっつけ合う」などの行動も含まれます。彼らは多様なセクシャル・コンタクトを楽しみ、それによって群れの平和を守っているのです。
セクシャル・コンタクトは、大事なコミュニケーション!

日本の夫婦は子どもができると、男女の関係でいることよりもパパ・ママになることを重んじ、セックスはもちろん、キスやペッティングなどを含めた「セクシャル・コンタクト」を遠ざけてしまう傾向にあるようです。結果、日本は『セックスレス大国』とまで呼ばれています。セックスレスとは「特別な事情がないにもかかわらず、カップルの合意した性交あるいはセクシャル・コンタクトが1ヶ月以上ないこと」と定義されています。
セックスを含むセクシャル・コンタクトは、パートナーへの愛情や思いやりを表明する、大事なコミュニケーションです。『どうして分かってくれないの?!』と感情的になったときや、相手の気持ちがなんだかささくれだっていると気づいたなら、セクシャル・コンタクトでコミュニケーションするのも、いい方法です。
セックスレスが発端となり、コミュニケーション不足に発展していくことも少なくありません。普段から肌のふれあいやぬくもりを感じあう機会を多く持てば、ボノボの世界のように「穏やかで平和な環境」を保つことができそうです。
1970年生まれ。1996年より、漫画原作者として活動。2009年、日刊誌連載「日本性史」にて、アダルトライターとして活動開始。
スマートフォンアプリ「セックスの日本史」、女性向けWEBサイト連載「蔦葛物語」「オンナとオトコの日本史/世界史」などの著作がある。