いろいろな型がある!

現在、実際にお付き合いをしているカップルを対象にした研究です。ソーンヒルらはまず、男性の免疫力が低い(それは、体がシンメトリーかどうかで判断する)と、女性が排卵期にパートナーに興味を失い、別の男性に興味を抱いてしまうということがわかりました。
そうすれば、彼女は浮気をするか、今の彼氏と別れて、もっといい男性と付き合おうとするだろうと考えられます。
ちなみに、ここで言う、「いい男性」というのは、世間で言われる「いい男」とほとんど同じ意味ですが、本質は免疫力が高いということです。
ともあれ、ここまで見てきたように、女性の匂いによる相手選びにはこうした、とにかくいい男という絶対的な側面とともに、相対的な問題もあります。HLAの型のラインナップがなるべく自分とは違う相手の匂いをいい匂いと感じます。
それというのも、その相手とのあいだに生まれた子が、免疫的に損をしないように、つまりはHLAの型という切り札を重複して持たないようにさせるという、大切な問題があるからです。
ソーンヒルらは、この点について、実際にお付き合いをしているカップルを対象に研究しました。まず、各人のHLAの型を調べます。
全ての箇所ではなく、A、B、DRという臓器移植や骨髄移植の際に合うことが必須とされる箇所を調べます。
排卵期の気持ちとは?

女性は、なるべくHLAの型が違う相手を選んだはずですが、それでも完全に違う相手を選びきれているわけではないです。
場所によっては相手と同じ型を持っている場合が多々あります。
その同じ型を相手とシェアしている度合いと、女性が相手に対して抱く感情や、取る行動とのあいだには何らかの関係性があるに違いないということになります。
HLAの同じ型を相手とシェアしている割合が多い場合ほど女性は、排卵期のオルガスムスの回数が少ない傾向があります。また、同じく排卵期に仕方なくセックスする傾向があるそうです。
それならまだしも、排卵期にセックスを拒む傾向があり、もはや修復のしようのない結果が現れてきます。
女性が今、こういう状態にあるのなら、やがてどうなるか。おそらく…別れることになるでしょう。
ただ、この場合救われるのは、男性にとっても
女性にとっても、お互いHLAの型が合いすぎているから止めよう、というだけのことで、円満な別れと言えます。別れが悲劇とは限らないということを覚えておきましょう。
動物行動学エッセイスト。
1956年生まれ。1979年京都大学理学部卒業後、同大学院にすすみ、博士課程をへて著述業に。
1991年に出版された『そんなバカな!-遺伝子と神について-』は、ベストセラーとなり、第8回講談社出版文化賞「科学出版賞」を受賞。
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