男性の臭いの原因とは?


少し前にこのコーナーにお邪魔した竹内久美子です。今回のシリーズでは人間の臭い、特に男の臭いについて考えてみることにします。
臭いにはまず、誰の鼻にも明らかな、いい臭い、悪い臭いというものがありますね。
「ああ、いかにも男の臭いだなあ」、「若い男の臭いだなあ」といった臭い、あるいは、汗臭いとか、おえっとする臭い。
ところが、Tシャツに男の臭いを染み込ませ、女に嗅いでもらい、臭いの評価をさせる。すると同じ男の臭いでも、女によって評価が違ってくる―そういう相対的な側面もあります。ここではまず、誰の鼻にも明らかな臭いについての話から始めます。
とはいえ、『源氏物語』の裏のように、お香のようなかぐわしい臭いを発する男は現実にはいません。残念なことに(それは女についても言えることです)。せいぜい言えるのは、臭くないというレヴェル。
ただ、この臭くないか、臭くないかという点が大問題で、実は男の免疫力と深くかかわっている、と言ったら驚かれるのかもしれません。
男の体臭の元になる物質としては、まずアンドロステロールなるもの。男の臭いの代表であるジャコウ臭(男性用化粧品ではムスクの香りと言われる)の正体がこれで、その化学構造は男性ホルモンの代表格である、テストステロンとよく似ています。
そして汗や皮膚にすんでいるバクテリアによって分解されたものも、臭いの元。汗や皮脂というものは、それ自体にはほとんど臭いがない。バクテリアに分解されて初めて臭いを発するようになるのです。
病原体と臭いの関係

ちなみにこういうバクテリアは、皮膚に住みついていて、ごしごし洗ったら取れるというような代物ではありません。
ともかくそうすると…皮膚にバクテリアがすむのを防ぐことがあまりできていない男ほど、汗や皮脂がバクテリアによく分解されて臭いことになる。
そういう男は、バクテリアの増殖を抑え込めていない。言い替えれば、免疫力の低い男なのです。
免疫力とは、バクテリア、ウイルス、寄生虫といった、病原体と戦う力のことだから、まさに汗や皮脂を分解するバクテリアと戦う力なのです。
我々は普通、臭い男が好きだとは思いません。男の汗臭さに魅力を感じるという女もいなくはないでしょうが、その汗がしみ込んだシャツを男が着続けたなら、「うへぇ~鼻が曲がりそうだ」という臭いになることは間違いありません。
実際、女が男の臭いを元に、本当に免疫力の高い男を見抜いている―そんな能力が女に備わっていることを証明した実験があるので次に紹介します。
動物行動学エッセイスト。
1956年生まれ。1979年京都大学理学部卒業後、同大学院にすすみ、博士課程をへて著述業に。
1991年に出版された『そんなバカな!-遺伝子と神について-』は、ベストセラーとなり、第8回講談社出版文化賞「科学出版賞」を受賞。