免疫力の高い男は臭くない?


女が匂いを元に、免疫力の高い男を選んでいる。ちょっと聞いただけでは信じられないような話ですが、本当です。この研究をしたのは、アメリカ、ニューメキシコ大学のR・ソーンヒルらです。
男の匂いは、まっさらのTシャツ(ヘインズのTシャツ)にしみ込ませてもらいます。週末の二晩、Tシャツを着て寝、昼間はビニール袋に入れておく。
とはいえ、本人以外の匂いが加わってしまっては意味がないので、彼らには厳しい条件が課せられます。
酒もタバコもダメ。コロンやアフターシェイブもダメ。香料の入った石鹸もダメなので、無香料の石鹸が渡される。にんにく、たまねぎ、ハーブ、キャベツ、セロリ、ヨーグルトといった食べ物もダメ。
そんなわけで誰かと添い寝するのも。ましてやセックスなど論外ということになります。そうして月曜日に禁欲と忍耐の賜物であるTシャツが提出される。
今度は女たちの出番だ。
それぞれのTシャツの匂いを丹念に嗅ぎ、1から10までの評価を下します。(10が最もいい)。もっとも、評価する女たちにも制限があって、同性愛者やバイセクシャル、閉経している者は除かれます。
ピルを使用していてもOKだが、この件についてはあとで大問題となります。で、問題は、免疫力の高さをいったいどういう方法で測るかということ。免疫力は血液を検査すればすぐわかる、というようなものではないのです。
匂いで分かる体のシンメトリー

そこで研究者たちは、免疫力の尺度となるものを苦労して探し、見つけた。それは、体のパーツのうち左右で一対になっている箇所。その長さや幅といったものなのです。
この研究では、耳の長さと幅、肘、手首、足首、足、それぞれの幅、手の指の長さ(親指は除く)、という10項目について左右の値を測る。そうして左右でいかに違わないか、シンメトリー(左右対称)に近いかがポイント。
実は、体が左右対称に発達するための妨げとなる一番の原因は、病原体にある。バクテリア、ウイルス、寄生虫などの病原体。それらにやられるほど、左右対称に発達しない。
ということは逆に、病原体にあまり出会わなかったか、出会ったとしても、それらに打ち勝った場合には体をより左右対称に発達させている。
その場合、その男は免疫力が高いと判断してもよいことになります。
ともあれ、女が匂いの評価を高く下した男は同時に、体が左右対称に近いという傾向が現れた。匂いの評価が低い男は、体が左右対称から遠い傾向があった。
女は匂いによって男の免疫力の高さを“見抜いて”いたのです。ただし、見抜けるのは匂いを嗅いだ当日が、月経周期のうちの排卵期にあったときのみの話。
排卵期以外のときと、ピルを使っている女には区別がつかなかったのです。ピルを使うと、こういう弊害もあることを知っておくべきでしょう。
動物行動学エッセイスト。
1956年生まれ。1979年京都大学理学部卒業後、同大学院にすすみ、博士課程をへて著述業に。
1991年に出版された『そんなバカな!-遺伝子と神について-』は、ベストセラーとなり、第8回講談社出版文化賞「科学出版賞」を受賞。