雅…MIYABI…和の香りと歴史

日本の香り文化をお話するには「沈香」をご紹介する必要があります。595年頃、淡路島に流木がうちあげられ、島人が薪にくべたところいい香りが立ち上ったという、その流木こそ「沈香木」だったそうです。
平安時代は、高貴な方々の生活の中に自分専用の香りを使う習慣がありました。もちろん男女共にですよ!男性も女性も自分の着物に自分専用のお香を焚いて香りを移してその着物を着ていたのです。
ですから香りだけで誰がその場に今までいたか、誰がこの場所を通ったか、残り香でわかるというもの。とても粋じゃないですか。もちろん夜這いの際も暗い部屋で彼女の香りさえわかっていれば間違えることもなかったという色っぽいお話も聞きますよね。
室町時代には、沈香を主体にして白檀や伽羅を焚いて香りを聞く「香道」が地位の高い人々、特に男性の皇族に必要なたしなみであったそうです。歴史的に見たら、日本は今よりももっと優雅に香りを楽しんでいた時代があったようですね。
西洋と日本の香り文化の違い

ここでひとつお勉強です。西洋と日本の香り文化にもともと大きく違いがあったことはご存知でしょうか。
日本の香り文化は、雅な世界のたしなみというもので美しささえ感じますが、西洋では悪臭、体臭を隠すために、強い動物性の香りをふんだんに使ったようです。日本と違い、毎日お風呂に入って体を清潔に保つことがなかなかできなかった当時のヨーロッパでは、かなり強い体臭を隠すのに苦労をしたようです。
当時マリーアントワネットがその強い香りを好まず、毎日の入浴を習慣とし、体を清潔に保ち、ラベンダーやスミレの淡い香りを好んで使っていたそうです。詳しくは私の著書【モテる!男のアロマ入門】をお読みいただければと思います。
一言でいうならば、西洋は消臭文化&強い香り、日本は無臭文化&淡い香りを好む歴史があるということですね。その国々で香りの使い方、香りのマナーは心得ていなくてはいけません。
知っていると素敵な香りのマナー

香りのマナーと言うと、多分、皆さんは「香水のつけ過ぎ」を思い出すことでしょう。それだけ身近でこのような「香害」に出会うことが多いのですね。
最近では流行りの衣類の柔軟剤から香る強い香り、長時間漂う香りを「香害」と呼んでいるようですね。柔軟剤の芳香がこれほど流行る前はやはり香水の付け方やTPOを考えるのが香りのマナーだったはずです。原点に戻り、香りのTPOについて考えてみましょうね。
Time(時間)
前回にも述べましたが、香りにはその揮発性によってトップノート、ミドルノート、ベースノートという種類に分かれます。使用する香水にどのノートが多く含まれるかによって周囲に香りを漂わせる力加減がかわってきます。朝からトップノートの揮発力ある香水がプンプンするのは大変に迷惑です。少量でほのかに香らせ、場合によっては午後にも付け足すぐらい慎重に香りのコントロールを行うとよいでしょう。
そして、時間だけではなく季節によっても好まれる香りが違うものです。暑い季節には爽やかさのあるさっぱりした香り、寒い季節には温もりを感じる香りですね。
Place(場所)
香りを身にまといたいと思うのはどんなときですか?少し自分を主張したいときや自信を持ちたいとき、自分を高めたい、素敵に見せたいときなどではないですか?日常的に香りを使っている人もいらっしゃるとは思いますが、特別なときに使う人も多いですね。
人前に立って頑張らないといけないプレゼンなどのときや、大好きな彼とのデートのときなど。そう考えるとオフィシャルな場や感情をあまり出してはいけない場では香りを控えるのがマナーになります。たとえば厳粛な式典、特に葬儀など悲しみの場、辛い思いをしている人たち(患者)がいる病院などです。そして、食事の場でも香りは控えめにしたほうがいいですね。
Occasion(場合)
Place(場所)と重なりますがOccasion(場合)もよく考えてみましょう。香りは目に見えないおしゃれです。その人を引き立たせ目立たせ、周囲に強いインパクトを与える場合が多いのです。
そのような役割を持っていることをわかったうえで主役がいるパーティーであなたが主役よりも目立つ香りの装いをしていたなら、非常識も甚だしいというものです。どんなに自分を素敵に装いたくても常識を疑われてしまっては元も子もないですね。
いかがでしょうか?日本の香り文化を知ると、先人たちのおしゃれな香り使いを真似てみたくなりますね。西洋人と比べて日本人は無臭を基本としていますので、TPOをわきまえた大人の女性の素敵な香り使いを楽しみましょう。
アロマイメージスタイリスト、芳香心理士、マナー講師。 出身地は神奈川県大和市 現在は埼玉県熊谷市在住。
「学びは癒し」をモットーにアロマスクール運営により多くの人々にアロマテラピー、メディカルハーブ、マナー&コミュニケーションをお伝えしています。