妊活が男性を萎えさせる


妊活や不妊治療を始めたら、なんだか夫婦関係がギクシャクしてしまった。そんなご夫婦の話をよく耳にします。「排卵日だから早目に帰ってきて」という妻の声に、夫が応えてくれない。排卵日のセックスだけがどういうわけかうまくいかない。そのことに妻が怒り出し、さらに夫婦関係がギクシャクする…。このように、妊活により男性が萎えてしまうケースは、決して少なくありません。排卵日だけED(勃起不全)になる「排卵日ED」という言葉もあるほどです。
妊活は、女性にとっては励みになることが多い一方で、男性にとってはプレッシャーとなってしまう場合が多いもの。 排卵日が男性にとってプレッシャーとなる原因のひとつに「夫婦間の意識のすり合わせができていない」ことが挙げられます。いきなり「意識のすり合わせ」と言われても、何のことやらよくわからないと思いますのでわかりやすく説明していきましょう。
夫婦間で妊活の意識が違うから、プレッシャーになる
夫婦というのは、わかり合えているようで、実は意外とそうではありません。長年一緒にいるので、お互いに「わかっているだろう」と思い込んでしまい、肝心なことを話し合っていないということがあるのでしょう。
たとえば、「子どもが欲しいかどうか」ということは話し合い、お互いにわかり合えているご夫婦がほとんどでしょう。しかし、それが「どれくらい切実に欲しいのか(いますぐなのか、数年後なのか)」「病院で治療をしてでも欲しいのか」といったことまでは話し合われていないことが多いのではないでしょうか。
この延長に妊活によるプレッシャーがあるといってよいかもしれません。
妻は、妊娠、出産と女性年齢にまつわるニュースを見て、「私も早く子どもを産んでおいたほうがいいかも。できることなら今すぐ妊娠したい!」と思い、夫に「子どもが欲しい」と伝えます。それを聞いて、夫も「たしかに、そろそろ子どもが居てもいいかもな」と思い、妻の意見に賛成します。しかし、夫は「そのうちできたらいい」と思っている程度。妻が「今すぐに、場合によっては不妊治療をしてでも欲しい」と思っているとは、夢にも思っていません。すると、「今すぐ妊娠したい」妻は、毎月の排卵日が来るたび、夫にプレッシャーをかけます。「そのうちにできればいい」と思っている夫は、妻の気迫に気が引けてしまい、結果、冒頭に言ったような排卵日ED状態になってしまうというわけです。
もちろん、これはほんの一例ですし、きちんと話し合われているご夫婦もいることでしょう。 けれども、こうした夫婦間での意識のすり合わせができていないことがきっかけで、男性がプレッシャーを感じてしまい、夫婦生活がギクシャクしてしまうことは、決して少なくないのです。
「子どもはいつかできる」と思っている男性が多い

加えて、「男性は女性よりも圧倒的に妊娠・出産、ひいては体や健康にまつわる知識が少ない」ということも、この問題に少なからず影響を与えています。
「女性は年齢とともに妊娠しにくくなる」というニュースが、ここ数年でかなり報じられたおかげで、「生理があればいつでも妊娠できる」と思っている女性の数はかなり減少しました。 けれども、男性においては、いまだにその事実を知らない人が、残念なことに相当数いるのです。これは思春期の頃から生理があるなど、自分の体に気を配る機会の多い女性と違って、男性は自分の体に向き合う機会を基本的に持っていないのです。
そのため、妊活以前に、健康や体への予備知識の量が、女性と男性とでは圧倒的に違います。女性にとって、「年齢とともに妊娠しにくくなる」ことは常識でも、男性にとってはそうでないことがあります。その結果、「なかなか妊娠できないことに焦る女性」 VS 「いつかは子どもができると思っている男性」、という構図ができあがってしまいます。そして男性は、排卵日を強調したり、生理がくるたびに落ち込んだりする女性の気持ちが理解できず、単にプレッシャーとして受け取らざるを得なくなってしまうのです。
まずは夫婦で話し合いを
こうした事態を防ぐにはどうしたらよいか――それは、夫婦でしっかりと話し合い、お互いの認識や意見をすり合わせるしかありません。「夫婦だからこそ」わかることもあれば、夫婦だからこそわからないこともあります。
お互いが子どもについて
- いつ頃までに欲しいと思っているのか
- 不妊治療をしようと思っているのか
- 治療をするとしたら、どの程度まで(たとえば、体外受精はするのかしないのか)しようと思っているのか
こうしたことを中心に、率直に話し合っておく必要があります。そこまで話し合うことができれば、あとは夫婦の間で互いにサポートしていけるはずです。
それが結果として、男性だけでなく女性をも、妊活のプレッシャーから救ってくれることになるでしょう。妊活を始めてから、どうも夫婦関係がギクシャクしているというご夫婦は、この機会にぜひ話し合ってみてはいかがでしょうか。
PR会社、マーケティングリサーチ会社、モバイルコンテンツ制作会社などでの勤務を経て、2009年よりフリーランスのライターに転身。
おもに妊娠や不妊に関する執筆を手がけ、医師や専門家への取材も多数。2014年4月に発売された「不妊治療ステップアップベストガイド」の執筆を担当。レディース予防医学指導士。