第一話『忙しい彼へサプライズ』


「今日も残業なんだ、ほんとにごめんな」
藤本誠の心からすまなそうな声に、
「あ……うん、わかった!じゃ次回ね」
笹本あかねは、ことさら明るい声を出して携帯を切った。
とたんに深いため息が出る。
(あーあ、またデートがおあずけかぁ……)
大学時代に恋人になり、2歳上の落ち着いた雰囲気の誠に、あかねは夢中になった。誠もまた、明るく行動的なあかねを心から大事に想ってくれている。
しかしそれから2年、社会人になると、誠は営業の仕事で多忙になり、二人の時間にすれ違いが出た。 心中不満なあかねだったが、誠が気づかってくれているとわかるだけに、それを口には出来ない。
(ちょっとしか会えなくても、その時間を思い切り楽しめばいいんだ)
ポジティブ思考のあかねは、すぐに頭を切り替えた。(もうすぐバレンタイン。チョコレートだけじゃなくて、誠になにかサプライズを贈りたい…よし!)
バレンタイン当日。
『今日は絶対会いたい!何時でもいいから来てね!』あかねからのメールに、誠は残業もそこそこに、彼女の部屋に赴いた。チャイムと同時に、頬を染めたあかねが、満面の笑顔で迎える。
「ハッピーバレンタイン!」 あかねはそう言いながら、手作りのチョコレートの箱と、きれいにラッピングされた包みを差し出した。
誠は嬉しそうに受け取り、「ありがとう、あかね。こっちは何?」 あかねは悪戯っぽく笑う。
「開けてみて!」 包みをほどくと、中から可愛いピンク色のローターが!
「なにこれ?!」 誠はびっくりして目を丸くする。その驚きぶりに、
「誠との時間を大切にしたいの。ちょっとしか会えなくても、いろんなことしてうんと楽しみたいの」
「あかね……」 誠は感極まってあかねをじっと見つめた。
あかねの黒目がちの瞳が潤んで光っている。彼女の全身から、愛のパワーが溢れている。そして、初めて手にするラブグッズに、誠の中に、今まで感じた事の無い興奮が生まれてきた。

「来て…」
あかねも艶っぽい表情で、誠を寝室へ導く。服を脱ぎかけたあかねを抱きすくめて、誠はピンクローターのスイッチを入れる。
「これ、ためさせてもらうよ」 あかねがこくりとうなずく。誠は静かに振動するローターを、そっとあかねの白い太腿の狭間に這わせてみる。
「あ……っ」 あかねの全身がぴくりとする。誠はそのまま、まだショーツをつけたままの密やかな裂け目に添って、優しくローターで上下になぞる。あかねの吐息が荒くなる。
「や…ん、誠、じんじんする…」 感じ始めたあかねに追い打ちをかけようと、誠はローターの先端で押し込むように尖ったクリトリスを刺激する。
「あっ、あっ、あふぅん、誠、だめぇ」 あかねが白い喉をのけぞらして、可愛らしく喘いだ。こんな感じやすいあかねの姿は初めてだ。
ショーツ越しに、じんわりと愛液の染みが広がる。誠の興奮が頂点に達する。
「愛してるよ、あかね!」 誠はそう囁きながら、あかねをベッドに押し倒した。
「誠、欲しいの……!」 あかねは全身を熱く燃え上がらせ、誠に強く抱きついていった。
第二話『2人の溶けあう時間』(トロケアウの切り出し方)

(彼女の周りだけ光っている) 最初に田中裕子を見たとき、そう辻洋介は思った。混雑する成田のロビーで、ロスの出張から戻ったばかりだった。別便の搭乗口で、幸せに頬を染める若い男女を取り囲むようにして、祝福の言葉を投げかけている人々。これからハネムーンに…
第三話『大喧嘩した後に仲直り』(スカイビーンズの切り出し方)

(えっ?うそ、なにこれ……!)絵梨のパソコンのマウスを操る手が、ぴたりと止まる。そっと背後の圭太の様子をうかがうと、彼は絵梨の動揺など気がつかず雑誌をめくっている。絵梨はもう一度パソコン画面を凝視した。『履歴』にはぎっしりとアダルトショップのHPアドレスが…